私の部下。



部下を初めて持ったのは入社2年目の去年のこと。
俗にいうマンツーマンのOJTというやつである。



OJTは入社5年目以降の主任クラスが行うのが原則と聞いていただけに、入社2年目の自分がまさか直属の部下を持つことになるとは思わずひどく狼狽したことは今でも記憶に新しい。
しかも1年目に居た秋田県から今居る千葉県に転勤したのと同時なので、新天地で自分のことであっぷあっぷなのと2年目から主任になったのも加えてトリプルパンチを喰らった気分でした。







さて、そんな私の元に着任してきた新卒の部下はどんなんだったかというと、一言で言うと本当に可愛げが無い。
とにかく生意気だったのだ。



京都大学を卒業してそのまま大学院へ、私のようなTOEICの点数取りの為だけのエセ英語ではなくしっかりと英語も勉強しており、おまけに模擬国連への出場も経験しているキャリアの持ち主。
加えて杏そっくりの小造りな顔立ち。




正直苦手なタイプである。









キャリアやスペックも可愛げが無いが、比にならないくらい性格も可愛げが無かった。



まず人をすぐに見下す。
私の元に着任してきて、最初に聞いてきたのが学歴。
うちの会社は院卒がほとんどなのだが、私は残念ながら4大卒。


自分ほどのキャリアの持ち主に私のような4大卒の、しかも年下が上司として就くのがよっぽどお気に召さなかったのだろう。
話をしていてすごく馬鹿にされているのがよくわかるほどだったし、質問の内容も私を試しているようなものばかりだった。
「私は自分より劣っていると判断した人の言うことを聞くつもりは無い」と遠回しに言われたことも。
  


ただ笑えないのが、ここまで極端ではないにしても、私も似通っている考えを持っていたことである。
自分みたいな性格の部下を持つのってすごく嫌だなと思ったけれど、だからこそこの子の少し意地の悪い態度や試しにもきちんと応えようとは思った。






私の1年目は自分の知識を詰め込む為に1日4〜5時間机にかじりついてたけれど、2年目はその知識をどうやって部下に卸していくのかに加えて、聞かれて答えられないことが無いように同時並行で自分の知識をさらに増やしていくことに頭をすごく悩ませた。
毎日平気な顔でつま先立ちをするって大変だなとも思った。




それでも頑張れたのは「なんで一生懸命勉強してここに入社したの?」っていう私のその場しのぎの話題づくりのような質問に対して「私は今まで人の役に立つために一生懸命勉強してきたからです」って大真面目に答えたその子の真っ直ぐな気持ちを大切にしたかったからだと思う。
思わず吹き出してぶん殴られたけど。










努力の甲斐があったのか、つま先立ちをしてばかりの私を不憫に思ったのか、あるいはどちらともか。
少しずつだけれど私の言うことをきちんと聞いてくれて、頼ってくれるようになった。



元々知識には貪欲な子で夜通しで勉強会を開いたりもしたし、地頭の良さから吸収も早くて本当に優秀だった。
たまに落ち込んでしょんぼりすることがあってもドライブに連れていったりゲーセンにでも連れていけばすぐに立ち直るような子だった。



私の元に着任して1年が経つ頃には期待以上に育ってくれたし、自分の伸ばし方もきちんとわかるようになっていた。
私に部署異動の話が出たのはそれからすぐ。OJTは原則1年だから卒業である。




今では同じビルには居るものの、部署は違う。
とんでもないパワハラのクソババアに自分の仕事を止められ、進まない状態にされていると前の部署の人達に教えてもらった。


うちの会社は仕事を片付けるのに決済担当の主任クラス以上の承認が必要なのだ。
去年まではその役を私とそのクソババアがやっていたのだが、現在はそのクソババア1人なので実質やりたい放題である。
毎日そうとう参っている状態と。
たまにすれ違うけれど、顔色も正直あまり良くない。










私に全国転勤が付いて回る以上、その子の傍にずっと私が居て承認の判子を押してやるわけにもいかないけれど、でも私が一生懸命育てた部下がそんなクソババアの気分1つで潰れてしまうのは本当にムカッ腹が立つ。
人の役に立つために頑張ってきたその子の思いがそんな意地の悪いクソババアにへし折られて欲しくない。


その子の可愛げの無い性格も少なからず問題はあるのだろうが、それ以上にクラッシャーと揶揄されているそのクソババアに問題の大半があると思っている。













でも何が一番ストレスって、現状を知ってて何の手立ても打てないで悶々としかできていないことが何よりのストレス。





私はどうするのが良いのだろうか。